オンラインの翻訳ツールを使ったことがある方は多いかと思います。
ガツガツっと英語のサイトなんかを訳してくれるのは、まだなんとなくいいとしても、自分で書いた文章を英語に訳させると、正直、「うーん、使えねぇー、これ」という結論に至った方も多いのでは?
機械翻訳というのは、語彙力は大学教授並み(あるいはそれ以上)なものも多々あるのですが、文章の理解力に関してはかなりKYです。人間で言うと5歳児くらいではないかと思います(2009年9月現在)。英語は、割と機械でも翻訳しやすい構造をした言語ですが、日本語は構造が難解な上、文脈に依存する言語です。なので、翻訳ツールをうまく活用するには、この5歳児並みの理解力を持った機械に分かってもらえる日本語を書いてあげる必要があるわけです。それを踏まえた上で、オンライン翻訳ツールとうまく付き合っていく方法をいくつかご紹介。
1. センテンスは短く。
原文が長くなれば長くなるほどわかりづらくなるのは、言語を問わず一緒です。正確な訳文を作るには一つ一つのセンテンスは短く切ってください。相手は5歳児です。長い文章は理解してもらえません。例えば、
雨が降っているので出かけたいと思っていたのですがやめることにしました。
ならば、簡潔に
雨が降っている。従って、私は外出しない。
と、2つの文に分けると良いかと思います。「出かけたいと思っていたことが重要」なのであれば、
私は外出したかった。しかし、雨が降っている。従って、私は外出しない。
と、3つの短い文章に分けると命中率もアップします。
2. あいまいな表現を避ける。
質問に対して回答する場合に、日本語はYesかNoかを言わずになんとなく流す、ということが出来る便利な言葉ですが、結論からまず書くと伝わりやすく、訳しやすくなります。
こちら側の意向としては前向きに対応させていただきたいです。
などと言わず、
はい。お願いします。または、ごめんなさい。今回は断ります。
という風に書いたほうが混乱は避けられます。
3. 主語を必ず入れる。
日本語で会話をする際に「わたしは」「あなたは」などと、いちいち主語を言わないのが普通ですが、英語は必ず主語が入る言語です。多くの場合、主語なしのセンテンスは、機械が勝手に主語を造り上げてしまいます。しかも、たいていの場合、itで文章が始まることになり、読む側としては、いつからこの人は自分のことをitで表現するようになったのだろうか、と首を傾げることに。
その意見に賛成です。ではなく、
私はその意見に賛成です。
と書くほうが命中率はあがります。
「その意見に賛成です」と書くと、「It agrees.」 と勝手にIT系な文章になってしまいますのでご注意。
4. コンプリートセンテンスで書く。
出来るだけ、「です」「ます」など一般的な表現で書くことが望ましいです。上記の例で言うと、
その意見に賛成。
までで、文章を留めてしまうと、
Agree with that opinion.(同意しなさい。)
と、命令形になってしまうことが多々あるので、「私はその意見に賛成です。」としたほうが吉。
5. 漢字で書ける単語は漢字で書き、日本語で書けるところは日本語で書く。
一休さんの言うところの「そのはしわたるべからず」的なお話ですが、
「橋」なのか、「端」なのか、トンチを効かされない為には漢字を使いましょう。「漢字」と「感じ」とか、「以外」と「意外」とか、「早い」と「速い」、などは特に注意。漢字を正しく使うことにも注意。ネット上でよく見かける「以外とおいしい」などが感じで伝わると考えるのは、百年とは言わないですが10年くらいは早いですよ。
その橋渡るべからず。
は、例えば
その橋を渡らないでください。
と書きなおすと良いです。また、
そのファイルをSaveする。
など、途中で英単語が入る場合、
そのファイルを保存する
または
そのファイルをセーブする
とした方が賢明です。「Saveする」とした場合、Saveが固有名詞扱いされ、"The file Save is done."などとなることが多いです。
6. スラングや略語は使わない。
普段何気なく使っている社内用語や会話的すぎる表現も、5歳児には理解できませんので、誰が読んでもわかる表現に置き換える必要があります。間違っても、「それ、あかん。」や「したっけねー。」や「賛成の反対なのだ。」などと入力してはなりませぬ。
7. 文章中に不要なスペースは入れない。
今日は 良い天気 です。
というメールを書く人をたまに見かけますが、日本語の文章において、途中でスペースを入れるのは文法的に正しくありません。機械翻訳の場合、違う行として認識される場合もありますので注意が必要です。
8. 丁寧すぎる言い回しは避ける。
2.とも通じるところですが、英語はフランクな言語なので、~頂きまして心よりお礼申し上げます、などと言わず、「ありがとうございます。」でたいていの場合は充分です。他にも、「お疲れ様です。」「よろしくお願いします。」「お世話になります。」など日本語固有のとりあえず言うけどあんまり意味はない的な表現は避けたほうが賢明です。
お疲れ様です。⇒こんにちは。
よろしくお願いします。⇒ありがとう。
などに置き換えるとよでしょう。
まいるす・ゑびす的には「お疲れ様です」も「お世話になります。」も英語に訳すと
Hi.
で充分です。ちなみに、よろしくお願いしますは、"Thanks in advance."と訳すことが多いです。
9. 訳された英文をもう一度翻訳にかけて日本語にしてみる。
訳された文章がなんかおかしい、と感じる場合にはその英文をもう一度機械翻訳にかけてみると確認できます。もしくは、自分で書いた文章が正しいのかどうかをこの方法で確認することもできます。
10. 不安な場合はググる。
「英語でこんな表現あるんだろうか?」と、不安で昼も眠れないような場合は、その英文を""でくくり「ウェブ全体で検索」を選択してググってみてください。ヒットした件数も重要ですが、その検索結果の上位に来るサイトの地域を確認してください。タイやマレーシアのサイトばかり出てくる場合は、怪しい可能性大です。アメリカのニュースサイトや大学関連のサイトが出てくる場合は、問題ない可能性が高いです。
上記の例であげた"The file Save is done"をググってみると2件しかヒットしないので、ん? なんか変だ? と気がつくはずです。
翻訳ツールはまだまだ発展の余地のある分野ですので、アウトプットされる英文の質はどんどんこれから上がっていくとは思いますが、ゴールデンルールとして
原文以上の訳文は作れません。
これは人が訳している場合でも大体同じですので、わかりやすい原文を書くことがなにより大切です。中学校の頃の、英語の授業で作った訳文のような、いわゆる日本語としては不自然でぎこちない原文を書くと訳文の精度はあがります。
基本的には
「誰が」+「何を」+「どうした}
が明記されていることが絶対的な条件といえるのではないでしょうか。
また、オンライン翻訳ツールなら全て同じではなく、それぞれに癖があるので、そこらへんも踏まえて翻訳ツールも選んでみてください。上の10の秘訣はツールの性能に関係なく使えるお話だと思いますので、有料の翻訳ソフトをお使いの方もぜひ参考にしてみてください。
データ漏えいのリスクがあるのでオンライン翻訳ツールに企業秘密は打ち込むべきではない、というお話も最後に付け加えておきますね。